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アフターコロナの獣医師のキャリア

キャリア関連

2021.4.12

みなさん、こんにちは。獣医師、キャリアコンサルタントの岡野です。
 
世間では、変わらずコロナの話題が多く取り上げられ、テレビでも、ネットを見ても、雑誌の表紙も「コロナコロナコロナ」。ネガティブな内容ばかりで疲れてしまった人も多いのではないでしょうか?
 
コロナで一変した世界。我々の日常は大きく変わりました。デリバリーやテイクアウト、デジタルコンテンツなどといった自粛生活を楽しむための需要が急上昇しましたね。
 
その中でも、大きな変化といえば働き方。感染拡大防止のため、人との接触を極力避ける方向へシフトしていきました。世間一般では、フレックス制度、テレワーク(リモートワーク)の導入の2つが大きいところと言えますが、遅々として進まなかった働き方改革が、コロナをきっかけに、今までにない速さで推奨されていると感じています。
 
「元の世界には戻れないだろう」と予想されるアフターコロナ(ウィズコロナ)。世の中の状況に合わせ、柔軟に新しい働き方を模索する必要がありそうです。動物病院においては、緊急事態宣言下においてもエッセンシャルと位置付けられ、上記したような働き方は難しいのが現状です。
 
しかし働き方を考える中で、自身の働き方やキャリアについて考える時間を持った方も多いのではないでしょうか?そこで今回は、獣医師またキャリアコンサルタントの視点からの動物病院におけるキャリアについて考えてみたいと思います。
 
キャリアとは?
動物病院を経営されている方にとっては、スタッフの働き方、動物病院で獣医師として勤務されている方は、臨床獣医師としての働き方など。自身のキャリアについて、色々考えるキッカケを与えてくれたのも、コロナ危機です。国の政策である一億総活躍時代の働き方改革により、“キャリア”という言葉は皆さんの耳にも馴染みのあるものになっているのではないでしょうか?
 
キャリアという言葉は、外来語ではあっても日本社会の中でかなり以前から用いられており、あえてその意味を問い直す必要性を感じていない人も少なくないでしょう。一般的に日本においては、下記のようなイメージが強いのではないでしょうか?
 
•経歴
•専門技能を持って職に就いている者 → プロフェッショナル
•キャリア (国家公務員) – 日本における国家公務員試験の総合職試験、上級甲種試験又はI種試験(旧外務I種を含む)等に合格し、幹部候補生として中央省庁に採用された国家公務員の俗称である。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
 
しかし、現在の日本においては、このキャリアという言葉の意味も変化してきており、厚生労働省職業能力開発局「キャリア形成を支援する労働市場政策研究会」報告書において、「キャリア」とは次のように定義されています。
 
✔キャリアの定義
「キャリア」とは、一般に「経歴」、「経験」、「発展」さらには、「関連した職務の連鎖」等と表現され、時間的持続性ないし継続性を持った概念として捉えられる。
「職業能力」との関連で考えると、「職業能力」は「キャリア」を積んだ結果として蓄積されたものであるのに対し、「キャリア」は職業経験を通して、「職業能力」を蓄積していく過程の概念であるとも言える。
出典:厚生労働省職業能力開発局「キャリア形成を支援する労働市場政策研究会」報告書
 
言い換えると、キャリアとは仕事を通して様々な経験やスキルを得ていく「プロセス(過程)」であるということです。言葉は生きているといわれるように、時代によって“キャリア”という言葉によって表現される現象は具体的に異なります。
 
動物病院におけるキャリアは、新人時代の研修時代に始まり、一般的な臨床を学んだ後は、専門分野や大学院へ、勤務医で経験を積み管理職の役割も担う獣医師、また自身で開業する経営者という形で続いているのではないでしょうか?
 
流動的な現代の様な社会においては、変幻自在なキャリアを構築する必要があり、現代社会における「キャリア」は幅広い意味を持つようになってきているのです。それは、ペットをめぐる業界、動物病院でも同じであり、雇用する側も、雇用される側も現代における“キャリア”を理解するのは、双方にとって大切な事だと考えます。

今後求められるキャリアについての考え方
ボストン大学マネージメント・スクール組織行動学の教授であるダグラス・ホールは、心理的成功こそがキャリアの最終目標であると考えて、独自のキャリアに対する定義を提唱しています。
 
•キャリアとは、成功や失敗を意味するのではなく、早い遅いでもない
•キャリアは歩んでいる本人によって評価されるものである
•主観的なキャリアと客観的なキャリア双方を考慮する必要がある
•キャリアとはプロセスであり、仕事に関する経験の連続である
 
また、ホールは、現代のような産業社会における構造改革によって、個人と会社組織間の心理的契約が変化したことにも述べており、その中でキャリアへの考え方が、組織内キャリアから個人の仕事における心理的成功を目指す自己志向的なキャリアに変化したと述べています。この考えを、プロティアン・キャリアといい、キャリアとは、現代では組織によって形成されるものではなく、キャリアを営む本人が成功と思えるキャリアを自ら柔軟に構築してくことだとしています。
 
✔個人と会社の心理的契約
•個人は組織に色々な期待を寄せているということと、組織もまた個人に色々な期待を寄せていることを暗に意味する
•これらの期待とは、給与だけでなく、個人と組織間の権利、特権、義務関係の全ての方を含んだものである
•心理的契約は、組織から個人に対して権威を通じて施行され、個人から組織に対しては、上部への影響力を通じて施行される
 
プロティアン・キャリアに欠かせないもの

上記の表のように、伝統的キャリアと比べるとプロティアン・キャリアは、個人の柔軟性が高く、その価値感を間違えれば独りよがりなキャリアになりかねません。それ故、プロティアン・キャリアが言うところの心理的成功の意味を理解する必要があります。心理的成功とは、下記のことによって導かれます。
 
1.挑戦しがいのある目標
2.目標達成していくことに自分なりの意味を見出した時
3.目標が自己概念にとって重要
4.実際に目標を達成した時
 
今まで以上に自らの価値観や興味に気づいていること、過去の自分、現在の自分、未来の自分が連続しているという確信が必要になってくるのです。そうでなければ、ただ変化に自分を合わせるだけになってしまい、本当の意味での心理的成功を体験するとこはできなくなるでしょう。プロティアン・キャリアでの、心理的成功のためにはアイデンティティとアダプタビリティが必須となります。
 
■アイデンティティ
アイデンティティとは、一言で言えば自分の価値や自分の軸になることを言います。
■アダプタビリティ
アダプタビリティとは、「適応できる」「順応できる」という意味ですが、キャリアを構築するためには、変化を受け入れ、それに適応する能力が求められます。
 
雇用する側と働くスタッフの考え方の違い
雇用する側とされる側では、基本的に興味や関心は大きく異なります。VETS TECHにおいて2019年に実施されたアンケート結果です。


この結果の解釈においては、質問項目は違いますが、雇用する側が働く獣医師に求めることと、雇用される側の獣医師との間では、意識に違いがあるようにみえます。
 
雇用する側は、コミュニケーション能力や病院理念のへ理解、診療スキルが高いことに対し、働く側が、重要視している事は給与条件や教育体制や支援であることがわかります。上位3位には職場での人間関係を重要視していることがわかりますが、働く側が給与条件や休みを重要視していることと比較すると、雇用する側では、福利厚生に関しての関心は高くありません。
 
昨今の獣医療における就職に関しては、福利厚生が整理されているのが当然という考えから、雇用側にとっては優先順位の高い項目ではないのかもしれません。
 
まとめ
雇用する側と働く人との興味・関心は大きく異なります。その為、雇用する側と働く人との中間に、それぞれの興味・関心を一致させる接点を作る事はとても大切です。
 
働く人が、今後のキャリアを考える上では、心理的成功ということが一つの鍵になってくる現代。この心理的成功をおさめるためには使命と自信が互いに影響しあい、それらが目的を達成するための努力を導くとされています。
 
流動的な現代において、個々のキャリアを形成していく上で、自分の価値に気づき、目的意識を持つことはとても大切なことです。また、雇用する側においても、個々のキャリアに対する考え方を理解し、動物病院における個々へのキャリア支援を行うことで動物病院も発展し、さらには動物業界の発展に寄与するものと考えます。
 
執筆者:岡野 顕子 先生
(Veterinary Career Lab SMILE 代表、獣医師、キャリアコンサルタント)

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