獣医師のキャリア~それぞれの歩み~
みなさん、こんにちは。
獣医師・キャリアコンサルタントの岡野 顕子です。
前回は、獣医師の働き方とWell-beingウェルビーイングについてお話しさせていただきましたが、今回は獣医師のキャリアについてお話ししたいと思います。
多様な生き方が求められる現代においては、一人一人悩みは異なります。それは、獣医師にとっても同じです。キャリアコンサルタントとして受ける相談には、育児と仕事の両立、介護と仕事の両立、自身のスキルアップや体力の低下、職場の対人関係から後輩指導など様々です。
キャリア支援を行う中で見えてきた課題
動物病院でキャリア支援を行う中見えてきた課題の一つに、獣医師自身が主体的なキャリアを描けていないということがあります。働き始めて数年は、技術の研鑽に励み目標が明確なのですが、その先の自分の人生と仕事の目標が、とても不明確ということです。
その主体的なキャリアを描けていない理由の一つに、メンターが身近にいないということがあるのではないかと思いました。多くの動物病院の場合、勤務し続けている先輩獣医師が少なく、将来のビジョンが描きにくいということがあります。私自身、勤務医時代においては自身が組織で上の立場であり、目標となる先輩獣医師がいないことで、今後どのようになってゆくのか、どうすればいいのか、先が見えない時代がありました。幸い私自身は病院の枠を超えて、活躍される女性獣医師との出会いがあり、自分の目指す獣医師像、勤務医像が見えるようになりました。
多くの獣医師にとって、様々な獣医師のキャリアを知る機会は少ないのが現状です。その結果、先が見えず獣医師としてどう働いていけばいいのか、わからない状況になる方も多いのではないでしょうか?
キャリアコンサルタントとしての視点
そのような業界における課題に気付き始めた時、「先生のキャリアについて、聞きたいです」と言われることがとても多く、大変驚きました。キャリアカウンセリングでは、私が話す場ではなくクライエント(相談者)の話を聴く場として考えていたので、当初どのように答えていいのか戸惑いました。同時に、そのような質問をするクライエントは何を求めているのか、何を知りたいのか考えるに至り、獣医師としてどのようなキャリアが歩めるのか、情報が欲しいのだと気付きました。
私自身、20年獣医師として歩む中で、多くの獣医師の方と出会い、刺激を受けてきました。そこで、今回私が受けた刺激を多くの獣医師の先生方にも知っていただきたいと思い、8名の獣医師の方にインタビューをさせて頂き、それぞれのキャリアについて語っていただいたものを、一冊の書籍としてまとめました。
それぞれに大切にしているものや価値観があり、歩んできたキャリアがあります。
獣医師の方にとって、多くの獣医師のキャリアを知ることは、個人個人が主体的なキャリアを歩む一助になると考えています。
勿論、他の方のキャリアを読んだだけで自身のキャリアを主体的に歩むことはできないと思いますが、自身のキャリアについて考えるきっかけになるのではないでしょうか?
永年にわたって小動物臨床に従事している獣医師、小動物臨床から転職して企業で活躍している獣医師、起業した獣医師など、『獣医師』と言っても働き方は様々です。
インタビューではそれぞれの方に以下の内容でお話いただきました。
- 現在の働き方
- 獣医師を目指した理由
- その分野を目指すことになったきっかけや動機
- やりがいやモチベーション
- 仕事の中で感じていること
- 今後の目標
- 読者へのメッセージ
また、今回は4名の女性獣医師にお話いただきました。女性は人生において、結婚や出産など転機が多く訪れます。その中で、ご自身のキャリについて悩まれることも多く、女性獣医師として働き続けられている方の体験談は、女性にとってあまり聞くことのできない貴重なものです。
8名の体験談から、獣医師として歩み方のヒントを得ることができます。
獣医師資格保有者、そしてこれから獣医師を目指す方、獣医師としてどのようなキャリアの道があるのか模索している方に、ぜひ読んでいただきたい1冊です。
- 読んだ方のコメント
- ・自身のキャリアについて考えるきっかけになった
・それぞれの獣医師のキャリアに関してのコアな部分が読んでいて分かり、素の獣医師の部分、素の人間としての言葉を感じられた
・獣医師だから悩むこと、獣医師だから考える必要があることが詰まっている
・獣医師という資格の多様性と可能性を感じた
令和時代に求められるキャリア
厚生労働省が提唱しているキャリアの概念(厚生労働省『キャリア形成を支援する労働市場政策研究会』報告書)の中では、『時間的持続性ないしは継続性を持った概念』として定義されています。本来キャリアとは、就職・出世・現在の仕事等の点や結果を指す言葉ではなく、働くことに関わる「継続的なプロセス(過程)」と、働くことにまつわる「生き方」そのものを指しているのです。つまり、キャリアを積むということは、この仕事の経験を積むという事だけではなく、その仕事に取り組むプロセスの中で、身につけていく技術・知識・経験に加えて、人間性を磨いていくこと、そしてプライベートも含めた自分自身の生き方を磨いていく事を指しているのです。
そして、令和に求められるキャリアは、人生100年時代を生き抜くキャリアであり、「組織」と「個人」の関係性をマネジメントする時代と言われています。例えるなら、昭和は「組織の時代」、平成は「個人の時代」、そして令和は「関係性の時代」へと変化しています。
つまり、「組織に残るか/独立するか」「転職するか/今の組織にのこるか」といったどちらかを選ぶということではなく、AND MOREでキャリアを形成していくのが令和に求められているキャリアです。
インタビューをさせて頂いた獣医師の先生方は、そのAND MOREが自身のやりたいこと、自身の人生をより豊かに歩むために歩まれているように思います。

岡野 顕子
Veterinary Career Lab SMILE 代表、獣医師、キャリアコンサルタント
日本大学獣医学科卒業後、20年近く小動物臨床に従事し、また10年以上管理職を経験。
現在は、獣医師そしてキャリアコンサルタントの視点から、働くスタッフと経営者の相談に乗りながら動物病院専門のトータルアドバイザーとして動物病院をサポート。
管理職や20年近くに及ぶ現場での一般臨床の経験や知識を基に、働くスタッフが笑顔であり続ける環境を目指し、奮闘中。

小出 健人
株式会社VETS TECH 代表、獣医師
今回、岡野先生がご執筆された「獣医師のキャリアーそれぞれの歩みー」にてインタビューをしていただきました。
私自身のキャリアとしては臨床獣医師→企業での学術、マーケティング→VETS TECHの起業という流れになります。
VETS TECHについては会社員として働きながら運営をしてきました。
まさに今回の記事でいうところのAND MOREという働き方なのかもしれません。
私としては自分が興味のあること、やりたいことに素直に従って生きてきただけですが、今になって自分の「Want to」に従って生きていくことの大切さを実感しています。
変わったキャリアではありますが、少しでも参考になれば幸いです。
