
はじめに
今回、獣医学生と就活についてお話をする機会をいただきました!今の獣医学生がどのように自分のキャリアを考え、病院の見学先や就職先を決めているのか、座談会形式で色々とお話を伺いました。
インタビューさせていただいた方々

Oさん
大学6年生、女性、就職先決定済み、総合診療(一次診療)をしっかり学びたい

Sさん
大学5年生、男性、就職先仮決定、循環器と救急に興味があり、専門医の取得が目標

Kさん
大学5年生、男性、就職先未決定、小動物臨床と大動物臨床、どちらの進路にすすむのか悩み中
自分の興味関心を軸に、ネットだけでなく人づてのリアルな情報と組み合わせて絞り込んでいく
- これまでに動物病院の見学は何軒軒くらい行きましたか?また、見学にいく動物病院はどのように探しましたか?
- Oさん:私は5軒見学させてもらいました。5軒目で出会った院長先生が、まさに自分がなりたいと描いている獣医師像の先生でした。見学の動物病院を選んだ方法は地元にある病院を中心に、周りの方で犬猫を飼っている人から“この病院が丁寧でいいよ”といった、飼い主さんの口コミから探して連絡しました。あとは循環器の分野に興味があったので、循環器の二次診療施設にも見学に行きました。実際に見学してみると私には二次診療はまだ早い、一次からしっかり学びたいと思いました。あとは救急病院にも見学に行き、そこにいた方が勧めてくれた病院に見学に行き…というように、大抵はスタッフの方や飼い主さんなど、人からのおすすめで見学に行きました。
Sさん:私は8、9軒見学に行き、働きたい病院を決めました。専門医になることが目標なので、二次診療で働きたいと考えています。最終的に就職先の動物病院を決めた理由は、アメリカと同じローテーションのシステムで専門医の先生に指導してもらいながら学べる点、他の病院の専門医の先生と繋がることができたり、他の分野の専門医の先生とも繋がることができる点でした。
見学病院の探し方は、大学の教員の方で私がやりたい分野(循環器と救急)の専門の先生に紹介してもらったり、学会やセミナーで専門医の先生に話しかけて名刺をいただき、自分から連絡して見学に行かせてもらいました。
Kさん:私は大動物で7軒、小動物で7軒の病院を見学しました。5年の夏休み終わりまでに決めようと思っています。見学病院の探し方は、地方で就職したい、一次診療施設で整形外科に力を入れている、勉強会などを定期的にやっている、という条件から探して、実際に先輩に聞いて見学に行く先を選定していました。同級生は、まずは近くの病院に見学にいき、そこの先生が勧めてくれた病院にさらに見学に行く、というような探し方をしている友人もいます。
成長できるイメージが作れるか、話をしやすい雰囲気であるかが大事
- みんなたくさん見学に行っててとても意識が高いですね!見学にいって、どんなところを見ましたか?
- Oさん:私は、雰囲気が自分と合うか、質問しやすいかは重要視していました。質問できる環境でこそ成長できる部分があると思うので。
Sさん:獣医師と看護師さんの間で会話があるか、は気にしていました。また、獣医師の方はどこの病院でも優しく接してくれることがほとんどなので、どちらかというと看護師さんが、自分に対して話しかけてくれたりするかどうか、もみていました。
Kさん:ハード面で言うと、CTやMRIなど最先端の医療機器がある病院の場合、その機器を実際どの程度の頻度で使っているのかを看護師さんに聞いていました。また、獣医師はベテラン・中堅・若手の方がバランスよく働いてくれているといいなと考えています。あとはどんどん診察をして経験を積みたいと考えているため、若手のうちから診察をさせてくれそうかどうかも気にしてチェックしています。
Oさん:自分がもしその病院で働いたときに、数年後はこれくらいできるようになっているのかな、という自分の成長イメージにもつながるので、中堅や若手の先生がいると確かにありがたいですね。
身近なロールモデルがいるかどうか、病院のスタンスと自分の学んでいきたいスタンスの照らし合わせを行う
- ちなみに実際に病院見学に行ってみて、ここはいいな、と思う病院とここはやめておこうかな、と思う病院の違いはどんなところがありましたか?
- Sさん:一次診療施設の場合だと、働いている獣医師の先輩の中で、私のやりたい分野(救急や循環器)を得意としている先生がいるかどうかは気にしていました。
Oさん:病院によって経験を積めるスピードって違うと思うんです。とにかく診察に出て経験を積もう、という考え方の病院もあれば、座学でも学びながら実際の経験もして徐々に身に着けていこう、という考え方の病院もあると思います。その病院の考え方が自分の希望に合っていないと、やめておこうかなと考えました。
Kさん:若手獣医師が院長先生に言いづらいことを、ベテランの獣医師と定期的に面談することで拾い上げてくれるシステムを作っている病院がありました。それがとてもいいなと思って。ベテランの獣医師が院長に話してくれた結果、院内のルールが変わったりうまく回っていっているなぁという印象で、そういった仕組みがある病院が希望です。それからセミナーの補助など手厚くしていただけると学びたいところにどんどん参加できるので嬉しいです。
- ちなみにシステムの話がありましたが、雰囲気よりもそういった部分を重要視しているのですか?
- Kさん:私自身、あまり人間関係で悩むことがないので、あまり人同士の雰囲気は気にしていないのかもしれません。
今後家庭を持ったら、家族との時間などを大事にしたいと思っているので、福利厚生がしっかりしていてほしいです。NOSAIは育休がとりやすいですが、小動物臨床でもそういった制度があるといいなと思っています。大動物だと、田舎であるほど家畜が多いので獣医療は発展していると思いますが、結婚を考えたときに人医療などの住環境がある程度充実している地域がいいと思っています。
病院の理念はあまりみていない…それよりも誰がいて、どんなことをしているかをみている
- 小動物臨床ではここ数年福利厚生面などの待遇をしっかり充実させていこうと変化してきているとは思いますが、やはりそういう点は大切なポイントとなってきているようですね。病院のHPはチェックしましたか?動物病院が掲げる理念はどのくらい重要視していますか?
- Sさん:獣医師紹介のページは見ていますが、理念やHPのつくり自体はそれほど気にしていませんでした。
Kさん:同じく。病院の理念は大事だと言われますが、あまりその部分で違いを感じたり、惹かれることは少ないかもしれません。どちらかというと診療科であったり、夜勤があるかどうか、とかのほうを見ていますね。
Oさん:私もそうですね。どちらかというと症例の紹介とかがされているかは見たりします。
小出:学生のうちから理念が自分の価値観と合うかどうかってところはそこまで見ていないのがリアルなのかもしれませんね。むしろどんな人がいて、どんなことを得意としているのか、みたいなほうが大事なんですね。
それぞれの目標について
- みなさんキャリアプランがしっかりしているなと感じましたが、開業や専門性などの目標を教えてください。
- Oさん:一次診療をしっかりやって、救急の現場でも的確な判断ができるような獣医師になりたいです。
Sさん:私は海外に行って学び、専門医になりたいです。
Kさん:小動物臨床にすすんだ場合、まずは一次診療をきっちりやりたいです。循環器に興味があるので、1.5次施設で専門性も身に付けつつできるといいなと思っています。私は開業はあまり考えていませんが、開業したいと考えている友人もいます。
Oさん:私は個人の動物病院に就職するか、企業のグループ病院に就職するか考えています。企業の病院の場合、臨床現場以外の部署もあるため、将来家庭との両立を考えた場合にそちらに移動することも可能なのかなと。大学で広報のスタッフをしていて、イベントの企画、運営など携わっていてとても楽しかったのですが、そういったことを仕事にしてみたい気持ちもあり、企業も魅力的だなと思っています。
就活フォーラムや就職説明会への参加はそこまで積極的ではない
- 就活のフォーラムや説明会などには参加しましたか?
- Oさん:私は参加していませんね。自分で探したり、人に聞いたりするのが中心でした。
Kさん:春休みに、大動物、小動物、企業それぞれ大学が主催した説明会があったので参加しましたが、参加する人自体は少なかったです。
Sさん:自分は参加したことはありますがそこで決めるということはなかったです。あとは説明会ではないですが、求人サイトを利用している友人はいます。自分で条件に合致した病院を探す人もいますね。
時間、お金、場所の3つなら、時間が一番大切
- 病院を選ぶときにお金、時間(休み)、場所、この3つって大きな指標になる気がしますが、優先順位をつけるならどうでしょうか??
- Oさん:しいて言えば時間と給料が同列、勤務地は最下位ですかね。
Sさん:私は時間、お金、勤務地の順です。
Kさん:私の場合は時間、場所、お金の順です。地方で小動物臨床をやると、都会と比べて飼い主さんの金銭的にゆとりがある方とそうでない方が分かれるイメージがあります。飼い主さんの状況に応じて治療方法などを変えていくのも興味深いなと思っていて、地方での診療に興味があります。
Oさん:周りの女の子は、都心の方が色々と遊べる場所が充実しているから都心がいい、という人もいる印象です。
- 地元以外の地方での就職も候補に入りますか?
- Kさん:私はどこでもよく、いい環境があれば行きたいです。都心部よりも地方のほうがむしろ魅力的だと考えています。人手も足りていないですし、1年目からいろんなことをチャレンジさせてもらえるかな、という期待感もあります。地元を離れる抵抗もあまりないです。
Sさん:私も地域は特にこだわりはないです。自分が勉強したい環境がある場所であればどこでも。
Oさん:私は出身が関東ということもそもそも関東を前提に考えていました。他の地域も見るということは考えていなかったですね。今後働いていく中で変わる可能性もありますが、大学も含めてずっと実家からだったのでそのつながりを離れるのはちょっと抵抗があります。
小出:ありがとうございます。事前に獣医師の先生方からこれらの質問について聞いてみてほしい、というリクエストをいただいていたのですが、時間が一番大事というのが共通していて、逆に場所については大きなこだわりがあるわけではない、という点が興味深かったです。お時間いただき、ありがとうございました!
さいごに
いかがでしたでしょうか?私が就活をしていたのは14年とだいぶ昔となりましたが、当時を振り返りながら今の学生の話を聞かせていただきました。
今の学生の方たちが、ネット情報だけでなく実際に先輩や大学の先生、講演されている先生など自分の価値観に合う人のリアルな情報も大切にしながら病院を選んでいらっしゃるのがとても印象的でした。
また、遠い目標となるような人だけでなく、自分の身近なロールモデルとなるような方が働いていると魅力度が高まる、というのも確かに…と納得する部分でした。
しかし、私が学生の時にはどんなふうになりたい、みたいなイメージすら持っていなかったので…こちらの質問に対してスパっとそれぞれ回答できることに驚きでした。
協力いただいた獣医学生の皆さん、ありがとうございました!
