獣医師 服部幸先生のキャリアを深堀!(後編)|ベッツディグキャリVol.1|辛かった勤務医時代から猫専門病院の第一人者になるまで
はじめに
VETS TECHでは数多くの著名な先生方とセミナーを行ってきました。
そんな先生方がどんな勤務医時代を送ってきたのか、どんな考えをしていまの選択をしたのかは、なかなか知られていないと思います。
そんな先生方のキャリアを勤務医時代から深堀り(ディグ)していく企画、それが「ベッツディグキャリ~僕らの勤務医時代~」です。
勤務医の先生方の参考の一つになれば嬉しいです。
ディグキャリ第一回目は東京猫医療センターの服部先生をお呼びしました。
前編では吐くほど辛い勤務医時代について、お伺いしました。そんな服部先生がどのように今に至るのかディグキャリしていきます!
開業編
- 猫の分院長をしていた時から、現在の病院を開業するにあたってどんな思いがあったのでしょうか?
- なんだろう…やっぱなんかやってみたいじゃん、生まれたからには。
- 自分の責任と自分のものでやってみたい、そこじゃないですかね。
勤務医時代に毎日吐いていたくらい苦悩した服部先生が、開業したいと思えるほど臨床をしていきたいと思ったきっかけが気になりますね…。
飼い主様が腫瘍だから身体もあまり触っちゃいけないと思っていた。それはそんなことないので、身体をさすってあげたり、頭をなでてあげたりして大丈夫ですよとお伝えすると、嬉しそうに撫でてくれたんですよ。そうすると、その子も少し元気になったんです。もちろん最後は亡くなっちゃうんだけど、亡くなった後に飼い主様に「最後先生が触っていいと言ったから、すごく救われた。最後まで先生に診てもらえてよかった。」と言われたんです。
私自身最後は医療を提供したわけではない、ただ触っていいんだよと言っただけなのに、その言葉で救われる動物とそのご家族がいるんだと感じました。この仕事ってこんなに人に影響を与えるんだと思ったのはそこですね。
また、病院っぽくない高級ホテルのような空間を意識して、作りました。猫の病院も今後増えてくるだろうと思っていたので、猫の病院+αを意識していました。
上の写真のような高級感のある空間…素敵すぎます!
意識していたのは、メディアの仕事を増やすようにやっていました。
出版社から「原稿の締め切りは2週間です」と依頼を受けて、その日中には出来ると返答をして、1〜2日で書き上げていました。出版社的には原稿が期限通りに出ないというのが最悪のパターンなので、これだけ速く返答したら、やっぱり次の仕事に繋がっていくんです。なので、早く仕事を終わらせることを強烈に意識していました。
また、他の分野では第一人者になるのは難しいと思っていましたが、猫専門にすることで、その当時は第一人者になれると思っておりました。
思ったことをしっかり実現する服部先生のやり切る力は本当にすごいと感じました。
医療の限界はあれど、寿命はあれど、治らなくても、感謝してもらえる。誠心誠意やっていれば、治せなくても、先生に診てもらえて良かったと思ってもらえる。次の動物を飼っても、この子も先生に最後まで見てほしいと思ってもらえる。
先生に最後まで見てもらえてこの子は幸せだったと思ってもらえる瞬間をいかに作れるか。猫ちゃんとそのご家族が最後まで幸せだと思ってもらえることをいまは一番大事にしています。
一番嫌なのは、猫との別れが辛くてしんどくて、二度と猫を飼いたくない状態にしてしまうことです。「先生また猫飼っちゃった、また診てください」と言われたときにいい仕事が出来ていたんだなと感じています。
また、動物との毎日を楽しみたくなるような飼い主様との向き合い方が素敵だなと感じていました。
獣医業界のこれから
- これからの獣医業界に関してどう思われますか?
- 本当に動物病院業界が厳しい時代になってきているんじゃないかなと思います。
- もう足元は崩れ始めてきていて、グラグラしているような状態だと思います。だって、犬の飼育頭数は15年前から犬の飼育頭数は500万頭減っていて、日本で例えると5000万人くらいが消えたような感覚なんですよ。
犬猫への医療の意識の向上も限界があると感じていて、そこが頭打ちになるとかなり厳しい時代が来ると思っています。獣医療はすごく大きな転換点になっていくと思います。人と犬猫がどう関わり、そこにどう医療が介入していくのか、誰も予想がつかない時代になっていくんじゃないかと…。
- そんな中どんな人が成功していくと思いますか?
- 結局は人、人間力なんじゃないかと思います。
- 私はキャリアの浅い時から、如何に説明をわかりやすくできるかを意識し続けていました。
腫瘍科や循環器の先生のように知識の先端が尖っているわけではないので、どの教科書にも載っているような内容をわかりやすく、体系的に説明でき、「ああ、なるほど」と思ってもらえる。そして、熱意をもって気持ちを載せてしゃべるようにしています。これが、飼い主様に説明するときにも、セミナーで説明するときにも活きていると感じています。
そうなるために、日々のインフォームで意識し続けて、人間力をつけてきました。
さいごに
服部先生からこのディグキャリを読んでくださっている先生方にひとこと頂きました!
人間力を磨くにも環境が苦しかったら、なかなか自分らしさを発揮できないと思うし。
でも、人生でしなきゃいけない苦労の総数は変わらないと思うから、若いころは苦労するのも大事な経験だしその上で自分のキャリアを含めて道を再考していくのがいいんじゃないですかね。
服部先生、貴重なお時間いただきありがとうございました!
先生の臨床への向き合い方から、勉強方法、キャリアの歩み方、未来のことまで、本当に勉強になることが盛り沢山でした。
ベッツディグキャリでは、このように第一線で活躍されている獣医師さんの勤務医時代からディグキャリしていきます。今後も色々な先生が登場する予定ですので、楽しみにしていてくださいね!
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2005年よりグループ病院の猫の分院長を務める。服部 幸 先生
東京猫医療センター 院長
2006年アメリカ テキサス州の猫専門病院 Alamo Feline Health Centerにて研修プログラム修了。
2012年に東京猫医療センターを開業し、院長を務める。
2014年より、JSFM(ねこ医学会)理事に就任。