獣医師 塗木貴臣先生のキャリアを深堀!(前編)|ベッツディグキャリ Vol.7|国家試験浪人が転機に
国家試験浪人が転機に。
遠回りが教えてくれた、小動物臨床の道
VETS TECHでは、これまで数多くの著名な先生方とともにセミナーを実施してきました。
しかし、そうした先生方がどのような勤務医時代を過ごし、どのような考えのもとで現在のキャリアを選択されてきたのかは、意外と知られていないのではないでしょうか。
そこで今回、先生方のキャリアを勤務医時代から深掘り(ディグ)していく企画「ベッツディグキャリ~僕らの勤務医時代~」をお届けします。
本企画が、勤務医の先生方にとってキャリア形成を考える一助となれば幸いです。
第7回は、塗木先生をゲストにお迎えします。
TRVA動物医療センターの院長として、日本の獣医救急医療を第一線で牽引されてきた塗木貴臣先生。
前編では、大動物獣医の家系に生まれながら、小動物臨床へと進路を大きく転換した原点や、勤務医時代に大切にしていた「学びの環境」「プレーヤーとしての在り方」、そして開業志望だった中で、なぜ未経験の救急という道を選ぶに至ったのか、その決断までを率直に語っていただきました。
国家試験浪人が転機に。
大動物志望から小動物臨床へシフトした“最初のターニングポイント”
- 先生は大動物臨床志望だったとお伺いしましたが、小動物臨床を選んだきっかけはなんでしょうか?
- 国試浪人がきっかけでした
- 実家が大動物の獣医で、学生の頃は自分も大動物に行くものって思ってたんです。でも国家試験に落ちて、時間ができました。そこで日獣大の大学病院に週2で見学に行って、初めて小動物臨床を見たらめちゃくちゃ面白くて。大学で習ったことが“仕事になる”って実感が湧いて、一気に小動物臨床にシフトしました。
キャリアの原点となった一次診療の現場
- 最初の勤務先を選ぶとき、何を基準にしていましたか?
- 「やらせてくれること」と「院長以外の先輩がいること」を条件にしました
- 「自分である程度やらせてくれる」っていうのを、まず1つの基準にしていました。あとは院長以外の先輩がいるかどうかですね。そこは結構大事でした。実家でも父が院長で、代診の先生方はいたんですけど、やっぱり院長ってどこか近づきがたいというか、距離感のある存在なんですよね。だから、院長じゃない立場の先輩がいるっていうのは、すごく重要だなと思っていました。勤務時間とか給与の額とか、そういう条件は当時は一切考えていなくて、学ぶ環境としてどうか、そこだけを見ていました。
- 勤務医1年目は忙しいと思いますが、勉強はどうしていましたか?
- 休みの日に“短時間で集中”するスタイルでした
- 勉強熱心な同期がいて、「これくらいやらないと駄目なんだな」って隣で感じられたのが大きかったです。勉強は、休みの日の午前中にカフェで数時間だけする、みたいに習慣化していました。ただ、ダラダラやらず、「今週の課題はこれ。これが解決したら終わり」と区切りをつけて、終わったらしっかり遊んでいました。遊びはお酒とかフェスですね。オンとオフを切り替えるのは当時から大事にしていました。

- 2件目の病院に移ろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
- 一人で勉強することの限界を感じたからです
- 1件目は、とにかく経験を積ませてもらえる環境でした。1年目から避妊去勢をかなり任されていて、臨床経験としては本当に多かったと思います。ただ、就職活動のときには先輩がいると思って入ったのに、実際に入ったらいなかったんですよ(笑)。がむしゃらにやる中で、「これ以上は一人で勉強するだけでは伸びないな」と感じるようになりました。
そこで2件目は、開院して間もない病院を選びました。院長・副院長に加えて勤務医が1名いる体制で、勢いのある若手の院長の病院で学び直したいという思いがありました。
救急の道へ
- 開業志望だった中で、救急を意識し始めたきっかけは何だったのでしょうか?
- 成長していない感があり、転職を考えている中で救急と出会いました
- 一次診療で4年目くらいになると、日々の診療は一通り回るし、プライベートとのバランスも悪くない。でも、どこかずっと成長していない感や充実していない感があったんです。当時は「もう一件どこかで修行したら、その先は開業かな」と思っていたので、転職を具体的に考え始めました。二次診療でしっかり学ぶ道、大学病院で研修医をやる道、地方に行ってとにかく症例数をこなす道。いくつか選択肢はありましたが、友達が救急をやっていたので、「あ、そういう道もあるのか」っていう感じで、自然と選択肢に入ってきました。
- 最終的に「救急」を選択した決め手は何だったのでしょうか?
- プレーヤーでい続けられる環境だったからです
- 僕は「プレーヤーでいること」をすごく大事にしていて、研修医という立場よりも、自分で責任を持って症例を診られる環境の方が合っていると思っていました。救急では、状態の悪い子を自分で診断し、治療していく。その感覚が一番しっくりきたんです。
その中でもTRVAを選んだ理由は、週4勤務で休みが3日あることでした。夜勤はありますが、その分、時間の使い方は自分次第ですし、給与面も含めて時間を確保できるという点はかなり大きかったです。時間はお金で買えないので、その余白を持てる働き方はとても魅力的だなと思いました。
- 救急の緊迫感に不安はありませんでしたか?
- 未知だからこそ、やってみたかったんです
- 未知だったからこそ、逆に興味が湧いたんですよね。僕自身、経験していないのに物を言うのは良くないと思っていて、やったこともない段階で向き・不向きを決めるより、実際にやってみた方が早いだろうなと考えて、まずは飛び込んでみようという感覚でした。

さいごに
国家試験浪人という遠回りをきっかけに、小動物臨床の面白さに出会った塗木先生。大動物の家系に生まれながらも、自身の直感を信じて進路を転換し、一次診療の現場で4年間、プレーヤーとしての基礎を徹底的に築いてきました。学べる環境を最優先し、短時間で集中して学ぶ一方、遊ぶときはしっかり遊ぶ。そのメリハリのある姿勢が、勤務医時代を支えていたことがうかがえます。
一方で、日々の診療が回るようになったからこそ、「このままでいいのか」という違和感が芽生えていきました。複数の選択肢を前に、最終的に塗木先生が選んだのは、未経験だった“救急”というフィールドでした。やったことがないからこそ、まずは飛び込んでみる。その決断が、次のキャリアの扉を開くことになります。
後編では、「開業か、副院長か」という大きな分岐点、そして“必要とされる場所で働き続ける”という塗木先生のキャリア観を、さらに深く掘り下げていきます。
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塗木 貴臣 先生
TRVA動物医療センター 院長
2009年3月/日本獣医生命科学大学 卒業
2009年4月/埼玉県および東京都内の一次臨床施設で勤務
2013年/TRVA夜間救急動物医療センター(現:TRVA動物医療センター)入社
2015年/TRVA夜間救急動物医療センター 副院長 就任
2022年/TRVA動物医療センター 院長 就任
